栄養状態ってなに?

みなさんこんにちは。

「この人は栄養状態がいい」とか「栄養状態があまりよくないね」とか普段から「栄養」という言葉はよく使いますが、そもそも「栄養」って一体何者なのって気になったので、今回は先行研究を参考にしながら「栄養」について勉強してみました。


Table of Contents
1. そもそも栄養とはなにか
2. 栄養状態とは
3. 栄養評価の目的
4. 栄養状態の指標
5. 栄養状態の良い/悪い



 1. そもそも栄養とはなにか

厚生労働省の資料を参考にすると、

 栄養(nutrition)とは、生体が物質を体外から摂取し、消化、吸収、さらに代謝することにより、生命を維持し、健全な生活活動を営むこと
引用元:特定保健指導の実践定期指導実施者育成プログラム

と記載されています。

食品に含まれるさまざまな栄養素が体内に取り込まれて、消化・吸収・代謝される一連の流れすべてを「栄養」と言うので、「栄養状態」を評価する場合は、「食べているもの」だけではなく、「身体の状態」もみる必要があります。


 2. 栄養状態とは

栄養状態は以下の3通りに分類できます。

1. 適正な栄養状態
2. 栄養素が欠乏した状態
3. 栄養素が過剰な状態

栄養素が充分か不足しているかについては、日本人の食事摂取基準と照らし合わせてみると概ね把握できるかと思います。

食事摂取基準については以下のサイトが参考になります。
 栄養指導NAVI
 日本人の栄養摂取基準_厚生労働省

これはとてもシンプルで理解しやすいですね。
きちんと過不足なく栄養素が摂取できているかチェックすればよいですね。

しかし、先に書いたように栄養状態を評価する場合は身体の状態もみる必要があります。

身体活動が多い人は基準通りのエネルギー量を摂っていても体重は減るでしょうし、反対に寝たきりの生活をしている場合はエネルギーに余剰分が生まれる可能性がありますね。
BMIが同じでも、骨格筋が多いひともいれば脂肪が多いひともいるはずです。

骨格筋や脂肪はエネルギー源でもあるので、病気になった後の回復具合にも影響するでしょうし、骨格筋が少なくなれば筋力が低下したり、日常生活動作に支障が出てくる可能性があります。

そのため、栄養素の摂取量だけではなく、「栄養」の結果が身体にどのように表現されているか評価することも重要と言われています。



 3. 栄養評価の目的

栄養評価の大きな目的として、以下の4つが挙げられます。

 1. 栄養不良の種類・程度の把握
 2. 治療方法の選択・予後予測
 3. 栄養管理計画の作成
 4. 治療の効果判定

短期的な変化の検出には適していない栄養指標もあるため、適切な方法を選択することが必要になります。


 4. 栄養状態の指標

「栄養状態が良い/悪い」という言葉は、日常的に口にする機会も少なくないと思います。
しかし、何をもって良い/悪いとするのか定義することは非常に難しいことではないでしょうか。

実際、栄養状態を評価するための方法は数多く考えられています。

MNA(Mini Nutritional Assessment)やGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)、CONUT(Controlling Nutrition Status)score、GPS(Glasgow Prognostic Score)、N/L(Neutrophil/Lymphocyte)ratio...などなど。さまざまな方法が使用されています。
2018年には世界規模の低栄養診断基準である「GLIM criteria」が新たに発表されました。

血液検査の結果や体組成(骨格筋量・脂肪量)、水分バランスなども重要な指標と言えます。

こんなにたくさんの評価方法が考えられているのは、栄養素の摂取・消化・吸収・代謝の結果が非常に多くのバリエーションを持って身体に表れるため、いろいろな角度から栄養を捉える必要があるからではないでしょうか。

また、これまでは栄養指標として主に生理的指標や体成分が使用されてきましたが、ESPEN expert groupなどから身体機能も栄養指標のひとつとして評価することが提案されています。(ESPEN Expert Group Recommendations for Action Against Cancer-Related Malnutrition

たとえば、握力は簡便かつ侵襲のない方法として臨床でもよく計測されていますが、全身の筋力や身体機能と関連するだけでなく、栄養状態や治療成績とも関連することが報告されています。(Grip Strength: An Indispensable Biomarker For Older Adults



 5. 栄養状態の良い/悪い

ここ最近で栄養の良い・悪いがどのように定義されているか調べてみましたが、結局いまいち納得できませんでした...

健康な場合は各種栄養指標が基準値内であるか確認すればよいと思いますが、なにかしらの病気にかかっている場合はその疾患によって検査結果が変わってくるので、いろいろな指標から総合的に判断するしかないのかなと思います...

高齢入院患者の栄養状態の評価に関するレビューにおいても、単一の栄養指標ではなく、複数の栄養指標を組み合わせて栄養状態を評価することが推奨されています。Assessing the Nutritional Status of Hospitalized Elderly

たとえば、Kunimura A はCONUT scoreとBMIを組み合わせた評価がPCI後の心血管イベントと関連したことを報告していますし、Rossi AP はCRP値とMNAを組み合わせて評価することで高齢入院患者に生じる身体機能や握力の低下を予測できたと報告しています。


骨格筋量は、予後や治療成績の予測因子となることがよく知られていますし、GLIM criteriaにおいても評価項目のひとつに挙げられている重要な指標です。
65歳以上の健常高齢者を対象とした Konz T の調査によると、男女とも血中アルブミン濃度と骨格筋量の間には有意な相関があったと報告されています。
一方で、Abbass T の消化器がん患者の骨格筋量に関するレビューによると、骨格筋量はアルブミン濃度よりもmGPSやN/L比のような炎症反応の指標とよく関連しているようです。

当たり前ではありますが、健康な場合には関連がありそうな2変量においても、疾患がある場合には他の因子が強く影響して関連が見えなくなることもありうると思います。
したがって、疾患によって特徴的に生じる変化を把握して、適切な栄養指標を使って栄養状態を評価することが大切なのではないかと思います。


最近は身体機能も栄養指標にするように推奨されていることを先に述べましたが、骨格筋量と身体機能を組み合わせたサルコペニアに関する調査の結果も見てみましょう。
Abbass らと同じく消化器患者を対象とした調査でも、サルコペニア(骨格筋量/筋力/身体機能の低下)との関連を調べた Souza BU や Onishi S の研究では、サルコペニアの有無とアルブミン濃度の間に関連性があったことが報告されています。

これも当然の結果ですが、身体機能が評価に追加されることで関連する因子が変わってきました。
最初に「身体の状態」をみる必要があると述べましたが、生活する上では筋肉があることよりも動けることの方が重要になるので、身体機能も含めて「身体の状態」を評価することも大事かなと思います。


先行研究の多くにも書かれていますが、栄養状態は疾患ごとにその特徴が違います。
栄養状態を評価する際には、まずは対象の疾患の評価を行うことが大切なのかなと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました!

コメント

このブログの人気の投稿

GNRIによる栄養評価の意味と計算方法

リハビリテーションサマリーって何を書けばいいの?

AWGS2019によるサルコペニア診断基準の改定