GNRIによる栄養評価の意味と計算方法
みなさんこんにちは。
栄養評価にはいろいろな方法がありますが、その中でも「GNRI: geriatric nutritional risk index」は臨床でよく使用されているのではないでしょうか。
今回は「Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Bouillanne O, Am J Clin Nutr. 2005」を参考にしてGNRIについて勉強しました。
生体を維持するために必要な栄養素が不足することを低栄養と呼びますが、特にエネルギーやタンパク質の摂取量が不足した状態は PEM(Protein Energy Malnutrition)と呼ばれます。
高齢者はPEMに陥っている割合が高いと言われていますが、報告によってその割合は大きく乖離しています(20-78%)。
その理由のひとつは、評価方法やカットオフ値がそれぞれの研究によって違う場合が多いことです。
ひとつの指標によってPEMを診断することは難しく、標準的な評価方法が浸透していないことが指摘されていました。(2005年当時)
最近はGLIM criteriaによって栄養不良を評価することをが推奨されています。
GLIM criteriaによる栄養評価 アルブミン値は臨床的に一般的によく使われていますが、炎症や水分量の影響を受けるため、栄養状態の指標としては信頼性が高くないと言われています。
ESPENやPNNSは、70歳以上の高齢者の低栄養リスク把握するために MNA: Mini Nutritional Assessment を使用することを推奨していますが、MNA は入院患者よりも介護施設や在宅の高齢者に適した評価方法であり、質問者によるバイアスが入りやすいと言われています。
また、ESPENガイドラインでは、BMIと体重減少の組み合わせ(MUSTなど)を使用することも推奨しており、PNNSも NRI: Nutritional Risk Index を使用することも推奨しています。
NRIはアルブミン値と体重減少の程度によって栄養状態を評価します。ひとつの指標だけで栄養状態を評価することは難しいので、NRIではアルブミン値と体重減少の程度を組み合わせて評価します。
しかしながら、普段の体重を把握することは難しいので、入院患者の体重の増減の程度を評価できず、NRIを使用できない場合もあります。
そこで筆者らは、体重の変化量の代わりに現体重と理想体重の比を用いて栄養状態を評価する GNRI: Geriatric Nutritional Risk Index という方法を考えついたのでした!
ネットでGNRIの計算式を検索すると
GNRI = (1.489 × albumin(g/L)) + (41.7 × %IBW)
という計算式が出てくるかと思います。
筆者らの原著では(41.7 × %IBW)の部分が[41.7 × (weight/WLo)]となっています。
これは、高齢で立位での身長の計測が難しい患者が多いことが考慮されているからです。
WLoは膝下の長さから身長を予測し、予測した身長から計算した理想体重のことを指します。
したがって、原著に従ってGNRIを計算すると
GNRI = (1.489 × albumin) + [41.7 × (weight/WLo)]
WLo = H - 100 - [(H - 150)/4]
H = (2.02 × 膝下高) - (0.04 × 年齢) + 64.19
というすごく煩雑な方法になってしまいます。。。(式は男性の場合)
いろいろな論文を読んでみても膝下高から身長を予測した式を使用した計算方法を採用している論文は見かけないので、もうGNRIといえば先に紹介した方の計算式でいいのかなと思います。
GNRIの計算結果から、栄養状態は以下の4段階で評価されます。
GNRIのカットオフ値の参考になっているのは、アルブミン値と体重/理想体重の値です。
例えば、GNRI=82というのはアルブミン値=30g/L、体重/理想体重=0.9の場合を想定していて、GNRI=98というのはアルブミン値=38g/L、体重/理想体重=1.0の場合を想定しています。
先行研究から死亡率などのリスクが上昇するポイントしてアルブミン値は30g/L、35g/L、38g/Lがカットオフ値を定める基準となっており、体重減少はESPENガイドラインでスクリーニング時のポイントとされている5%~10%がカットオフ値の基準に定めています。
筆者らは、リハビリ施設に入所した65歳以上の高齢者を対象にGNRIによる栄養評価を実施し、その6か月後のアウトカムについて検討しました。
平均84歳の高齢者181人の6ヵ月後の転帰の内訳は、自宅復帰が57%、急性期病院への転院が4%、療養型病院への転院が8%、リハビリ施設に留まっているのが16%、死亡が15%でした。
GNRIによる栄養リスク評価でグループ分けすると、低栄養リスクなし群(92 ≦ GNRI)と比較して低栄養リスクあり群の死亡リスクは有意に高く、特に重度リスク群(GNRI < 82)は死亡のオッズ比が29.0と特に高い結果となりました。
また、感染症の発生についても同様に、低栄養リスクあり群のオッズ比は約3~5倍で有意に高い結果となりました。
筆者らは、血清アルブミン値による栄養評価でも死亡リスクや感染症発症リスクについて検討していますが、いずれもGNRIよりもオッズ比は低く、統計的に有意であったのは重度リスク群(Alb < 30g/L)の死亡リスクのみでした。
また、筆者らは1785人の高齢者を対象に栄養評価を実施し、GNRI < 82、BMI < 19、アルブミン値 < 30g/L の重度低栄養リスクありと判断された541人の関係について調べました。
GNRIのみで重度リスク群と判断された高齢者は全体の僅か3%しかいませんでしたが、BMIのみで重度リスク群と判定された高齢者は29%、アルブミン値のみで重度リスク群と判断された高齢者は15%もいました。
以上のことから、BMIやアルブミン単独で栄養状態の評価を行うよりも、これらの指標を組み合わせたGNRIで栄養状態の評価を行った方がいいのではないかと筆者らは主張しています。
実際に、GNRIはがんや内部疾患などの予後予測の指標として多くの研究で使用されています。
いかがでしたか。
GNRIは客観的で簡便な栄養指標としてリハビリ関連の学会・論文でもよく見かけますね。
自分もときどき研究で使用するので振り返ってみました。
原著はフリーで読めますので、興味を持たれた方はぜひどうぞ。
栄養評価にはいろいろな方法がありますが、その中でも「GNRI: geriatric nutritional risk index」は臨床でよく使用されているのではないでしょうか。
今回は「Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Bouillanne O, Am J Clin Nutr. 2005」を参考にしてGNRIについて勉強しました。
Table of Contents
1. なぜGNRIが考えられたのか
2. GNRIの計算式
3. GNRIのカットオフ値
4. GNRIによる栄養評価の意義
2. GNRIの計算式
3. GNRIのカットオフ値
4. GNRIによる栄養評価の意義
1. なぜGNRIが考えられたのか
生体を維持するために必要な栄養素が不足することを低栄養と呼びますが、特にエネルギーやタンパク質の摂取量が不足した状態は PEM(Protein Energy Malnutrition)と呼ばれます。
高齢者はPEMに陥っている割合が高いと言われていますが、報告によってその割合は大きく乖離しています(20-78%)。
その理由のひとつは、評価方法やカットオフ値がそれぞれの研究によって違う場合が多いことです。
ひとつの指標によってPEMを診断することは難しく、標準的な評価方法が浸透していないことが指摘されていました。(2005年当時)
最近はGLIM criteriaによって栄養不良を評価することをが推奨されています。
GLIM criteriaによる栄養評価 アルブミン値は臨床的に一般的によく使われていますが、炎症や水分量の影響を受けるため、栄養状態の指標としては信頼性が高くないと言われています。
ESPENやPNNSは、70歳以上の高齢者の低栄養リスク把握するために MNA: Mini Nutritional Assessment を使用することを推奨していますが、MNA は入院患者よりも介護施設や在宅の高齢者に適した評価方法であり、質問者によるバイアスが入りやすいと言われています。
また、ESPENガイドラインでは、BMIと体重減少の組み合わせ(MUSTなど)を使用することも推奨しており、PNNSも NRI: Nutritional Risk Index を使用することも推奨しています。
NRIはアルブミン値と体重減少の程度によって栄養状態を評価します。ひとつの指標だけで栄養状態を評価することは難しいので、NRIではアルブミン値と体重減少の程度を組み合わせて評価します。
しかしながら、普段の体重を把握することは難しいので、入院患者の体重の増減の程度を評価できず、NRIを使用できない場合もあります。
そこで筆者らは、体重の変化量の代わりに現体重と理想体重の比を用いて栄養状態を評価する GNRI: Geriatric Nutritional Risk Index という方法を考えついたのでした!
2. GNRIの計算式
ネットでGNRIの計算式を検索すると
GNRI = (1.489 × albumin(g/L)) + (41.7 × %IBW)
という計算式が出てくるかと思います。
筆者らの原著では(41.7 × %IBW)の部分が[41.7 × (weight/WLo)]となっています。
これは、高齢で立位での身長の計測が難しい患者が多いことが考慮されているからです。
WLoは膝下の長さから身長を予測し、予測した身長から計算した理想体重のことを指します。
したがって、原著に従ってGNRIを計算すると
GNRI = (1.489 × albumin) + [41.7 × (weight/WLo)]
WLo = H - 100 - [(H - 150)/4]
H = (2.02 × 膝下高) - (0.04 × 年齢) + 64.19
というすごく煩雑な方法になってしまいます。。。(式は男性の場合)
いろいろな論文を読んでみても膝下高から身長を予測した式を使用した計算方法を採用している論文は見かけないので、もうGNRIといえば先に紹介した方の計算式でいいのかなと思います。
3. GNRIのカットオフ値
GNRIの計算結果から、栄養状態は以下の4段階で評価されます。
GNRIのカットオフ値の参考になっているのは、アルブミン値と体重/理想体重の値です。
例えば、GNRI=82というのはアルブミン値=30g/L、体重/理想体重=0.9の場合を想定していて、GNRI=98というのはアルブミン値=38g/L、体重/理想体重=1.0の場合を想定しています。
先行研究から死亡率などのリスクが上昇するポイントしてアルブミン値は30g/L、35g/L、38g/Lがカットオフ値を定める基準となっており、体重減少はESPENガイドラインでスクリーニング時のポイントとされている5%~10%がカットオフ値の基準に定めています。
4. GNRIによる栄養評価の意義
筆者らは、リハビリ施設に入所した65歳以上の高齢者を対象にGNRIによる栄養評価を実施し、その6か月後のアウトカムについて検討しました。
平均84歳の高齢者181人の6ヵ月後の転帰の内訳は、自宅復帰が57%、急性期病院への転院が4%、療養型病院への転院が8%、リハビリ施設に留まっているのが16%、死亡が15%でした。
GNRIによる栄養リスク評価でグループ分けすると、低栄養リスクなし群(92 ≦ GNRI)と比較して低栄養リスクあり群の死亡リスクは有意に高く、特に重度リスク群(GNRI < 82)は死亡のオッズ比が29.0と特に高い結果となりました。
また、感染症の発生についても同様に、低栄養リスクあり群のオッズ比は約3~5倍で有意に高い結果となりました。
筆者らは、血清アルブミン値による栄養評価でも死亡リスクや感染症発症リスクについて検討していますが、いずれもGNRIよりもオッズ比は低く、統計的に有意であったのは重度リスク群(Alb < 30g/L)の死亡リスクのみでした。
また、筆者らは1785人の高齢者を対象に栄養評価を実施し、GNRI < 82、BMI < 19、アルブミン値 < 30g/L の重度低栄養リスクありと判断された541人の関係について調べました。
GNRIのみで重度リスク群と判断された高齢者は全体の僅か3%しかいませんでしたが、BMIのみで重度リスク群と判定された高齢者は29%、アルブミン値のみで重度リスク群と判断された高齢者は15%もいました。
以上のことから、BMIやアルブミン単独で栄養状態の評価を行うよりも、これらの指標を組み合わせたGNRIで栄養状態の評価を行った方がいいのではないかと筆者らは主張しています。
実際に、GNRIはがんや内部疾患などの予後予測の指標として多くの研究で使用されています。
いかがでしたか。
GNRIは客観的で簡便な栄養指標としてリハビリ関連の学会・論文でもよく見かけますね。
自分もときどき研究で使用するので振り返ってみました。
原著はフリーで読めますので、興味を持たれた方はぜひどうぞ。
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