低負荷レジスタンス・トレーニングによる筋力・骨格筋量に対する効果

みなさんこんにちは。

理学療法プログラムに筋トレ要素を取り入れることは大事ですが、病院に入院中の患者さんに対して高負荷の運動をしてもらうのは難しいことが多いですよね。

僕が学生のころは筋トレといえばできるだけ高負荷で行なうことが推奨されていましたが、最近は低負荷のトレーニングも評価されているようですね。

今回は、「Effects of different intensities of resistance training with equated volume load on muscle strength and hypertrophy. Lasevicius T. 2018.」を参考に低負荷トレーニングによる筋力と骨格筋量に対する効果について勉強しました。


Table of Contents
1. レジスタンス・トレーニングの基本
2. 低負荷トレーニングの理論
3. 低負荷トレーニングの効果



 1. レジスタンス・トレーニングの基本

レジスタンス・トレーニングのプログラムを組み立てるときのポイントとなるのは、「強度」「回数」「頻度」「インターバル時間」の4つです。

筋力強化や骨格筋量の増加を目的とする場合のレジスタンス・トレーニングでは、一般的に最大筋力(1RM)の65~85%の強度で行うことが推奨されています。

しかし、2000年代からは最大筋力の30~50%程度の低負荷のレジスタンス・トレーニングでも骨格筋量の増加が得られることが報告されはじめました。

2012年にはMitchellらによって、最大筋力の30%負荷で疲労困憊まで運動を繰り返した場合、最大筋力の80%負荷でトレーニングした場合と同程度の骨格筋量の増加が得られたことを報告しました。

高負荷トレーニングと同様に効果があるという認識が広がりつつある低負荷トレーニングですが、一体どういう理屈で効果が得られるのでしょうか。


 2. 低負荷トレーニングの理論

低強度トレーニングの効果を報告しているMitchellらによると、低強度の運動であっても疲労困憊まで運動を続けることによって、運動単位のプールをすべて動員して運動することができるので骨格筋量を増加させることができるのではないかと考察しています。

つまり、1回(1 repetition)あたりの運動負荷が少なくても、繰り返し回数を増やして、累積の運動量を増やすことで、しっかりとすべての筋線維に刺激を与えることができると考えられているようです。

 3. 低負荷トレーニングの効果

そうは言ってもやはり低負荷トレーニングの効果は、高負荷トレーニングと比較するとその効果には議論の余地があるようです。

LamonやLegerたちの研究では、低負荷と高負荷でトレーニングの効果に有意な違いはなかったと報告されていますが、CamposやHolmたちの研究では低負荷トレーニングよりも高負荷トレーニングの方がより効果が高かったと報告しています。

しかし、低負荷トレーニング研究の問題点として、高負荷と低負荷トレーニングの間で総合の運動量が異なる可能性が指摘されています。

そこで、Laseviciusらは20代の健常成人に対して異なる負荷(最大筋力の20%・40%・60%・80%)で疲労困憊まで行うレジスタンス・トレーニングを12週間実施し、筋力や筋線維横断面積の変化を調べました。

12週間後の筋線維横断面積はすべての群で有意な増加を認め、特に80%負荷のグループは20%負荷のグループと比較して12週間後の筋線維横断面積に有意に大きくなっていました。

6週間後の筋力はすべての群で有意な増加を認めましたが、12週間後の筋力は60%負荷と80%負荷のグループが20%負荷と40%負荷のグループよりも有意に強くなっていました。

各運動負荷のグループの総合の運動量(回数×セット数×負荷)に有意な違いはありませんでした。

低負荷トレーニングでも疲労困憊まで運動を行った場合、筋力は6週間、筋線維横断面積は12週間の介入によって効果がみられはじめるようです。

しかし、総運動量が同じ場合には、低負荷と比較して高負荷のトレーニングの方がより高い運動効果が得られることが分かりました。

患者さんの状態にあわせて、無理のない運動負荷で運動量を調整しながらプログラムをたてることが大事ですね。

コメント

  1.  はじめまして。
     東京都多摩地区の精神科病院で勤務している医師ですが、最近は急性期病棟でも高齢者の入院が増えました。
     そのため、現在は5 kg程度の軽量のバーベルなども準備し、スクワットを中心とする定量的なレジスタンストレーニングを導入しているところです。
     二十本程度のバーベル、総計数百キロのプレートもあり、設備は職員のジムとしても利用可能な環境です。
     もしよろしければ、一度御覧になりませんか。
     御検討のほど、何卒よろしくお願いいたします。
     

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