慢性呼吸器疾患に対するフィールドテストについて

みなさんこんにちは。

今回は、慢性呼吸器疾患患者の運動耐容能を評価する際に用いられる6分間歩行試験やシャトルウォーキングテストといった「Field Walking Test」について勉強しました。


呼吸リハビリテーションにおいて、運動耐容能の評価は患者さんの病態や身体機能の程度・変化を把握する上で非常に重要なポイントだと思います。

運動耐容能評価には、6分間歩行試験(6-min walk test; 6MWT)シャトルウォーキングテスト(Shuttle Walking Test; SWT)が用いられることが一般的かと思います。

6MWTでは対象者が自分のペースで歩く(self-paced test)距離を計測することで運動耐容能の評価を行いますが、SWTでは決められたペースで歩く(externally-paced test)距離を計測して運動耐容能を評価します。

SWTには、漸増負荷法のIncremental Shuttle Walking Test(ISWT)と、一定負荷法のEndurance Shuttle Walking Test(ESWT)の2種類があります。




時間を決めて歩行距離を測ることで運動耐容能を評価するという手法は、1963年のBalkeらの報告「A SIMPLE FIELD TEST FOR THE ASSESSMENT OF PHYSICAL FITNESS.」が最初のようです。

その後、12分間の歩行試験がよく用いられるようになったようですが、呼吸器疾患患者を対象とする場合に12分間は負荷として強すぎる場合が多々あったため、1982年にButlandらは論文「Two-, six-, and 12-minute walking tests in respiratory disease.」で2分・6分・12分での評価を比較・検討し、6分間での測定が推奨されるようになったようです。

2001年にはSolwayらが「6分間歩行試験は、他の歩行試験よりもより日常生活活動をより反映する方法である」と報告しており、現在では6分間での歩行試験が一般的になっているように思います。

参照:アメリカ胸部学会(2002)ATS statement: guidelines for the six-minute walk test.

ちなみに、6MWTでは片道100feet(約30.5m)のコースを確保することが推奨されています。

6MWTが確立され始めた1992年。Singhらは「Development of a shuttle walking test of disability in patients with chronic airways obstruction.」でIncremental Shuttle Walking Test(ISWT)の方法を発表しました。

ISWTは、10mのコースを往復する試験で、1.8km/minのペースで開始し、8.5km/mの12stageまで歩行速度をあげていく漸増的多段階負荷法を採用しています。

6MWT やISWTを踏まえて、1999年にRevillらは「The endurance shuttle walk: a new field test for the assessment of endurance capacity in chronic obstructive pulmonary disease.」でEndurance Shuttle Walking Test(ESWT)の方法を発表しました。

ESWTでは、ISWTの結果から予測した最高酸素摂取量に対応する最大歩行速度の85%のペースを保ちながら10mのコースを往復し続ける定常負荷法を採用しています。

ESWTは信頼性や再現性が高く、呼吸リハビリテーションや薬物・酸素療法による運動耐容能の変化を鋭敏に検出できると言われています。




それぞれのテストによる臨床的に意義のある最小差(Minimal clinically important difference; MCID)はどのくらいでしょうか

Hollandらは「An official European Respiratory Society/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease.」で、COPDなどの呼吸器疾患患者に対する運動療法などの効果を検討した11論文のレビューの結果、6分間歩行試験のMIDは中央値の推定は30mだったと述べています。

まだまだ6分間歩行試験のMIDは議論の余地があるようですが、Hollandらは25~33m程度の間にMIDが存在するだろうと結論づけています。

ISWTに関する報告は少ないようですが、CampoらやEiserらの研究ではISWTのICCは0.88~0.89と高く、測定の信頼性は高かったと報告されています。

しかし、ISWTは1回目の測定よりも2回目の測定の方が20~25m程度良い結果になることも報告されており、はじめてISWTを行う患者では学習効果が出てしまう問題も指摘されているようです。

一方で、ESWTは同日中に繰り返し測定しても統計的に有意な差は認められなかったと報告されています。

また、SinghらはISWTのMIDは47.5mであると報告しています。

運動療法によるESWTの変化量については不明ですが、Pepinらによって気管支拡張薬の治療におけるESWTのMIDは65秒または85mであると報告されています。

Pepinらは、呼吸リハビリテーションによるESWTのMIDは最大で180秒程度だろうと予測しているようです。




いかがでしたか。

6分間歩行試験やシャトルウォーキングテストについて紹介しましたが、それぞれのテストをどのように使い分けるかについては検討中のようです。

それぞれのテストの特徴を把握して、患者さんの状態に合わせて適切な方法が選択できるようになるといいですね。

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