サルコペニアとダイナペニア -difference between sarcopenia and dynapenia-

みなさんこんにちは。

今回は、骨格筋の質の特徴についてです。

筑波大学の山田先生の「differential characteristics of skeletal muscle in community-dwelling older adults. Yamada M, et. al., 2017」を参考にまとめました。

骨格筋量の減少を特徴とするサルコペニアは広く知られていますが、骨格筋量が維持されているにも関わらず筋力低下が生じている状態である「ダイナペニア」という概念も注目を集めていますね。

また、糖尿病患者においては、骨格筋内で脂肪変性が生じる「サルコペニア肥満」もリハビリテーション領域において話題かと思います。

加齢と筋力低下との関係については「ダイナペニアと加齢」をご参照ください。



Table of Contents
1. サルコペニアとは
2. ダイナペニアとは
3. ダイナペニアとサルコペニアの分類アルゴリズム
4. ダイナペニアとサルコペニアの違いはどこから生まれるのか



 1. サルコペニアとは

入院中患者のサルコペニアと運動機能・嚥下機能」という記事でも紹介しましたが、サルコペニアは筋力、または身体機能の低下と骨格筋量の減少と定義されています。

数多くの疫学研究において、サルコペニアは死亡率や身体機能障害、生活自立度の高いリスク因子であることが報告されています。

European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)は、筋力や身体機能、筋力を評価基準に用いてサルコペニアを

 1) プレサルコペニア(presarcopenia)
 2) サルコペニア  (sarcopenia)
 3) 重度サルコペニア(severe sarcopenia)

の3段階に分けています。

プレサルコペニアは、筋力や身体機能の低下を伴わない骨格筋量の減少と定義されており、サルコペニアの段階へ進む高いリスクがあると考えられています。

 2. ダイナペニアとは何か

ダイナペニアとは、加齢に伴う筋力低下のことです。

ClarkとManiniは、2008年の J Gerontol A Biol Sci Med Sci において「ダイナペニア(Dynapenia)」という概念を提唱しました。

ダイナペニアについては、サルコペニアと同様に死亡率や身体機能障害のリスク因子であることが報告されています。

多くの先行研究において、骨格筋量の重要性だけでなく、骨格筋の質の重要性についても指摘されはじめています。

老化に伴う骨格筋の変化として、速筋線維の減少や骨格筋内への脂肪の浸潤が生じることが報告されています。

近年では、骨格筋の量的・質的変化を観察する方法として、MRIやCT、dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)、bioelectrical impedance analysis(BIA)法、超音波エコーなどが用いられるようになりました。

それでは、高齢者の骨格筋を量的・質的な観点からどのように分類できるのでしょうか。




 3. ダイナペニアとサルコペニアの分類アルゴリズム

Yamadaらは、BIA法と超音波エコーを用いて各段階のサルコペニア患者の骨格筋の特徴を評価することを目的として研究を行いました。

そして、Yamadaらは骨格筋の量的・質的な特徴からアルゴリズムを作成し、骨格筋タイプを4種類に分類しました。アルゴリズムは本文をご参照ください。

筆者らの研究によって、プレサルコペニアとダイナペニアの間には注目すべき違いがあることが明らかとなりました。

プレサルコペニアおよびサルコペニア患者は、骨格筋量が低下しており、サルコペニアおよびダイナペニア患者は、骨格筋の質が低下していることが示されました。

つまり、

  サルコペニア:  筋量低下・筋機能低下
  プレサルコペニア:筋量低下・筋機能正常
  ダイナペニア:  筋量正常・筋機能低下

ということになります。


骨格筋の質の低下は、超音波エコーの筋輝度上昇(エコー画像が白っぽく映る)で確認することができますが、これは骨格筋内に脂肪が入ること(霜降りのような現象)や筋線維タイプ比の変化が原因で生じます。

骨格筋の質と筋機能の変化は、筋肉内脂肪のような異所性脂肪や内臓脂肪がベースとなって生じていると考えられています。




 4. ダイナペニアとサルコペニアの違いはどこから生まれるのか

たしかに、骨格筋量の減少と筋力の低下に関わる因子の多くは共通しています。

しかし、Morley JEらは2016年の論文で「骨格筋量と筋力のそれぞれに関連する因子は明らかに異なる」と報告しています。

例えば、成長ホルモンやIGF-1(insulinlike growth factor-1)量の減少は、骨格筋量の減少に影響する一方で筋力低下には関与しません。

逆に、インスリン抵抗性や血清ビタミンD濃度は筋力低下に影響しますが、骨格筋量の減少には関与しません。

従って、骨格筋の量と質はそれぞれ独立した因子によって制御されていると考えられます。

最近では、サルコペニア診断に筋力や筋量、身体機能が必要となりました。骨格筋の量と質はそれぞれ異なる因子からも影響を受けるので、量と質の両面で骨格筋の評価を行う必要があると言えそうですね。

原著には超音波エコーの綺麗なFigが掲載されていますので、是非ダウンロードしてみてください。

PubMed:Differential characteristics of skeletal muscle in community-dwelling older adults. Yamada M, 2017


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